2002年4月17日水曜日

【裁判例情報】富士見交通事件

富士見交通事件(東京高裁平成13年9月12日判決)

(事実の概要)
タクシー運送を業とするY社に勤務し、かつ労働組合の副支部長でもあったXは、組合執行委員会に出席するため、所定の非就労届をY社に提出した。しかしXは同委員会を欠席し、またY社で就労することもなかったため、Y社は、正常勤務を怠ったことを職場放棄とみなし、これを理由に懲戒解雇する旨の通知書をXに交付した。Xは、Y社の懲戒解雇は懲戒権の濫用に当たるとして、雇用契約上の地位の確認及び解雇日以降の賃金の支払を求めて出訴した。Y社は1審の審理中、Xには職場離脱のほか、交通違反やメーターの不正操作等の非違行為があり、懲戒解雇が相当である旨主張した。1審は、本件懲戒解雇事由は職場離脱行為とそれに密接に関わる行為のみであり、Y社が追加主張したXの行為は、懲戒解雇当時にY社が認識していなかったか、あるいは認識していたとしても懲戒解雇に相当する事由とは考えていなかったものと認定し、職場離脱行為とそれに密接に関わる行為につき就業規則所定の懲戒解雇事由には該当せず、懲戒解雇を無効であるとした。これに対してY社が控訴したものである。

(判決の要旨)
使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないが、懲戒当時に使用者が認識していた非違行為については、それが、たとえ懲戒解雇の際に告知されなかったとしても、告知された非違行為と実質的に同一性を有し、あるいは同種若しくは同じ類型に属すると認められるもの又は密接な関連性を有するものである場合には、それをもって当該懲戒の有効性を根拠付けることができると解するのが相当である
これを本件についてみるに、前記認定の事実関係によれば、Y社は、本件懲戒解雇の際、Y社主張に係るXの非違行為のうち本件懲戒解雇前に行われたものすべてについて認識し、かつ、これを懲戒解雇事由とする意思であったが、これが多岐にわたるため、本件懲戒解雇を最終的に決定する契機となった事由すなわち<中略>職場離脱のみを本件通告書に記載したにすぎず、懲戒解雇事由をこれに限定する趣旨ではなかったものと認めることができる。<中略>
このような経緯をも総合して考えると、<Xの職場離脱等の行為は、>他の非違行為ともども、Xの勤務態度の劣悪さを示すものであるとともに、<Xが所属する組合の副委員長から>これを改めるよう忠告を受けていたものであって、一体として密接な関連性を有するとみることができる。したがって、本件通告書に記載された<中略>職場離脱のみならず、それ以外の前記認定に係るXの非違行為もまた、本件懲戒解雇の有効性を根拠付けることができるものというべきである。

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