2002年4月17日水曜日

【裁判例情報】ダイハツ工業事件

ダイハツ工業事件(最高裁昭和58年9月16日第二小法廷判決)

(事実の概要)
自動車製造を業とするY社の工員であったXは、日米間の沖縄返還協定をめぐるデモに参加し、凶器準備集合等の嫌疑で現行犯逮捕・勾留され、その間Y社を欠勤した。その後Xは出勤したが、Y社が事情聴取のために命じた労務課への出頭を無視し、従前の職場で作業を行い続けたことから、Y社はXに自宅待機を命じた。しかしXは連日にわたってY社工場に立ち入ろうとして警士(警備員)とトラブルを繰り返したため、Y社はXを20日間の出勤停止処分とした。Xは出勤停止期間中も工場に立ち入ろうとして警士ともみ合ったほか、Y社の門前で抗議ビラの配布を行った。そこでY社は、前記出勤停止処分の後に、再度Xを20日間の出勤停止処分に付した。2回目の出勤停止処分が満了する日に、Y社は、Xの働く適当な職場がないとして無期限の自宅待機命令をなしたが、Xは当該待機命令中、工場に立ち入って、これを排除しようとする警士ともみ合いになり、ベルトコンベアが3分間停止する事態となった。また、別の日には同様に工場に立ち入り、警士に対して打撲傷を与えた。Y社はこれらの事態に対し、Xを懲戒解雇した。Xは従業員としての地位の確認を求めて出訴した。1審及び2審は1回目の出勤停止処分を有効としたが、2回目の出勤停止処分及び懲戒解雇については無効と判示した。これに対してY社が上告したものである。

(判決の要旨)
本件第二次出勤停止処分及び本件懲戒解雇がいずれも権利濫用に当たるとする原審の判断は、首肯することができない。思うに、使用者の懲戒権の行使は、当該具体的事情の下において、それが客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合に初めて権利の濫用として無効になると解するのが相当である。
このような見地に立って、まず本件第二次出勤停止処分をみると、<中略>本件第一次出勤停止処分の対象となった一連の就労を要求する行為とその目的、態様等において著しく異なるところはないにしても、より一層激しく悪質なものとなり、警士が負傷するに至っていることと、Xは本件第一次出勤停止処分を受けたにもかかわらず何らその態様を改めようとせず、右処分は不当で承服できないとしてこれに執拗に反発し、その期間中工場の門前に現れて右処分の不当を訴えるビラを配布するという挙に出たこととを併せ考えると、本件第2次出勤停止処分は、必ずしも合理的理由を欠くものではあく、社会通念上相当として是認できないものではないといわなければならず、これを目して権利の濫用であるとすることはできない。
次に、本件懲戒解雇について考えるに、<中略>Xは、実力を行使して工場構内に入構しようとし、そのため多数の警士に傷害を負わせ、更に一時的にもせよ工場内のベルトコンベアを停止せざるをえないような事態を招いているのである。<中略>警士が負傷する可能性のあることはXにも当然予見できたことといわなければならない。しかるに、Xは、あえてこのような実力による就労という行動に出ているのである。<原審ではベルトコンベアの停止による被害は微少であると認定しているが、>Xの行為により工場の業務そのものにまでかかる具体的な被害が招来されたことは、むしろ極めて重大な事態といわなければならない。
自宅待機命令が必ずしも適切なものではなく、Xが右命令は不当なものであると考えたとしても、その撤回を求めるためには社会通念上許容される限度内での適切な手段方法によるほかはないのであって、Xの行為は企業秩序を乱すこと甚だしく、職場規律に反すること著しいものであり、それがいかなる動機、目的の下にされたものであるにせよ、これを容認する余地はない。<中略>
以上のようなXの行為の性質、態様、結果及び情状並びにこれに対するY社の対応等に照らせば、Y社がXに対し本件懲戒解雇に及んだことは、客観的にみても合理的理由に基づくものというべきであり、本件懲戒解雇は社会通念上相当として是認することができ、懲戒権を濫用したものと判断することはできないといわなければならない。

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