2002年4月17日水曜日

【裁判例情報】日本メタルゲゼルシャフト事件

日本メタルゲゼルシャフト事件(東京地裁平成5年10月13日決定)

(事実の概要)
鉄鋼、非鉄金属等の輸出入、国内販売等を業とするY社に雇用されていた労働者Xは、非鉄金属関係部門の部長の職にあったが、Y社から2回にわたって約3か月後の日付を指定して退職を勧奨する文言等の含まれた「FORMAL NOTICE OF RESTRUCTURING」と題する書面(以下「前者書面」という。)を交付された。Xはこれに対して異議を申し立てることなく、書面を受領し、事務の引継ぎを行い、以後出勤しなくなった。後日Y社はXに対して、Xが協調性に欠けていること、XがドイツにあるY社の本社に対してY社の代表者らを誹謗中傷する文書を送付したことを理由として、書面により、Xを懲戒解雇する旨の意思表示をした(この書面を以下「後者書面」という。)。その約2か月後に、Y社はさらにXに対して、30日間の予告期間を設けた普通解雇の意思表示をした。Xは、前者書面が解雇通知であり、この通知により出社に及ばずと命令されたので、後に異議をとどめるつもりで不本意ながらそれに従って自宅待機をしただけであり、退職勧奨に応じたものではないと主張し、また、Y社が懲戒解雇事由として掲げた行為は存在せず、解雇は無効であると主張し、従業員としての地位保全仮処分を申請した。これに対してY社は、前者書面により退職勧奨をしたところXがこれに応じたものであると主張、また、この退職勧奨や懲戒解雇が無効であるとしても、懲戒解雇の事由が普通解雇の事由にも該当する場合には、懲戒解雇の意思表示が普通解雇の意思表示に転換して効力が認められるべきであると主張した。

(決定の要旨)
<前者書面には、約3か月後の日付を指定して退職を勧奨する文言があり、それまでの期間は出勤する必要はないが賃金を支払う旨の記載があること等の事情を勘案すれば、>これをもって解雇通知であると解することは困難である。
<後者書面により>Y社が懲戒解雇の事由として掲げる事実はいずれも労働者に対する制裁の極致としての懲戒解雇に値するものとは解されないので、主張自体失当である。
懲戒解雇は、企業秩序違反に対する制裁罰として普通解雇とは制度上区別されたものであり、実際上も普通解雇に比して特別の不利益を労働者に与えるものであるから、仮に普通解雇に相当する事由がある場合であっても、懲戒解雇の意思表示を普通解雇の意思表示に転換することは認められないと解する。
<Y社が予告期間を設けて行った普通解雇の意思表示については、>Y社が小規模な会社である上に、既に非鉄金属部門でトラブルを起こして移籍及び降格された経歴のあるXを受け入れる部門もなく、もはや配転により心機一転を図ることも困難であること、昨年来業績が悪化しており、従業員が一丸となって不況に立ち向かわなければならない状況にあること等を勘案すると、Y社のした本件解雇をもって解雇権の濫用であると認めることはできない。
Xは、右解雇をもってY社の4度目の解雇の意思表示であって、解雇権の濫用であると主張するが、<前者書面が>解雇の意思表示ではないことは既に判示したとおりであり、懲戒解雇と普通解雇とは既に判示したとおりその要件及び効果が異なるのであるから、Y社がその双方を選択することは何ら妨げられるものではなく、右主張は失当である。

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