2002年5月11日土曜日

【裁判例情報】昇進、昇格、降格

◆ 人事考課

マナック事件(平成13年 広島高裁判決)
人事考課規程により人事評定や評定の留意事項が詳細に定められている場合においては、昇給査定にこれらの実施手順等に反する裁量権の逸脱があり、正当な査定に従って昇給する利益が侵害されたと認められるときには、使用者が行った昇給査定が不法行為となるとし、人事考課規定に定める査定期間外の事実を査定対象としたことについて、裁量権を逸脱したものとして違法とされた。

東日本電信電話事件(平成16年 東京地裁判決)
人事評価は、基本的には使用者の総合的裁量判断が尊重されるべきであり、それが社会通念上著しく不合理である場合に限り、労働契約上与えられた評価権限を濫用したものとして無効になるとした。

◆  昇進

芝信用金庫事件(平成12年 東京高裁判決)
昇進については、極めて実践的な経営判断、人事政策に属するものであって、専権的判断事項というべきものであるとした。

◆ 昇格

社会保険診療報酬支払基金事件(平成2年 東京地裁判決)
男女差別の禁止は、公の秩序として確立しており、男女が平等に取扱われるという期待ないし利益は、不法行為における被侵害利益として法的保護に値すると解すべきであり、昇格における差別につき故意又は過失があったときは、不法行為が成立するとし、また、使用者の職員に対する昇格は、原則として職務と一体になった等級を使用者の人事上の裁量によって変更するものであり、あくまで使用者の裁量権の行使であるため、使用者による昇格決定のない者を昇格したものと取扱うことはできないとした。

光洋精工事件(平成9年 大阪高裁判決)
人事考課については、評価が合理性を欠き、社会通念上著しく妥当を欠くと認められない限り、これを違法とすることはできないというべきであるとした。

住友生命保険事件(平成13年 大阪地裁判決)
既婚者であることを理由として、一律に低査定を行うことは、個々の労働者の業績、執務、能力に基づき人事考課を行うという人事権の範囲を逸脱するものであり、人事権の濫用として、かかる人事考課、査定を受けた個々の労働者に対して不法行為となるとした。

◆ 降格

① 役職の引下げ

エクイタブル生命保険事件(平成2年 東京地裁決定)
役職者の任免は、使用者の人事権に属する事項であって使用者の自由裁量にゆだねられており裁量の範囲を逸脱することがない限りその効力が否定されることはなく、就業規則などに根拠規定がなくとも、その人事権に基づく降格処分ができないとはいえないとした。

バンク オブ アメリカ イリノイ事件(平成7年 東京地裁判決)
課長から専門職への役職の引き下げについて、業務上・組織上の高度の必要性があったこと、役職手当は減額されるが、人事管理業務を遂行しなくなることに伴うものであること、降格発令をされた他の多数の管理職らは、いずれも降格に異議を唱えていないこと等の事実からすれば、使用者に委ねられた裁量権を逸脱した濫用的なものと認めることはできないとした。

デイエフアイ西友事件(平成9年 東京地裁決定)
配転と賃金とは別個の問題であって、使用者は、より低額な賃金が相当であるような職種への配転を命じた場合であっても、特段の事情のない限り、賃金については従前のままとすべき契約上の義務を負っているとした。

医療法人財団東京厚生会(大森記念病院)事件(平成9年 東京地裁判決)
人事権の行使について、使用者に委ねられた裁量判断を逸脱しているか否かを判断するにあたっては、使用者側における業務上・組織上の必要性の有無及びその程度、能力・適性の欠如等の労働者側における帰責性の有無及びその程度、労働者の受ける不利益の性質及びその程度、当該企業体における昇進・降格の運用状況等の事情を総合考慮すべきとした。

倉田学園事件(平成9年 高松高裁判決)
労働契約の基本的内容を変更する降職処分は、労働契約の同一性を前提とするものではないから、就業規則所定の懲戒事由を根拠として行うことは許されないとした。

近鉄百貨店事件(平成11年 大阪地裁判決)
管理職ではない者に対する、給与の減額という不利益を伴う降格について、会社の昇進、降格についての裁量は、管理職についての昇進・降格の裁量と比較すれば、狭く解するべきとした。

アメリカン・スクール事件(平成13年 東京地裁判決)
降格処分について、就業規則に定めがない場合であっても、人事権の行使として、降格処分を行う(地位から解く)ことも許されるとした。

渡島信用金庫事件(平成14年 函館地裁判決)
降格、降職行為等が人事権の行使としての裁量権を逸脱しているかどうかを判断するに当たっては、使用者における業務上、組織上の必要性の有無及び程度、労働者の受ける不利益の性質及びその程度、使用者における降格、降職等の運用状況等の事情を総合考慮すべきであるとした。

② 職能資格の引下げ・職務変更に伴う賃金の引下げ

アーク証券事件(平成12年 東京地裁判決)
労働者の自由な意思に基づく合意や就業規則変更の合理性が認められなかったため、変動賃金制(能力評価制)導入に伴う役職及び号俸の引き下げが認められなかった。

小坂ふくし会事件(平成12年 秋田地裁大館支部判決)
労働契約において賃金は最も重要な労働条件としての契約要素であり、これを従業員の同意を得ることなく一方的に不利益に変更することはできないとした上で、降格についても、これに減給が伴うものであるから、一方的な降格処分は無効とした。

フジシール事件(平成12年 大阪地裁判決)
本件の就業規則上、副参与職は、「職能」資格であり、これは本来引下げられることが予定されたものでなく、これを引下げるには、就業規則等にその変更の要件が定められていることが必要であるとした。

西東社事件(平成14年 東京地裁決定)
賃金額に関する合意は雇用契約の本質的な部分を構成する基本的な要件であって、使用者において一方的に賃金額を減額することは許されず、これを正当化する特段の事情もないとして、配置転換に伴う賃金減額を無効とした。

日本ガイダント仙台営業所事件(平成14年 仙台地裁決定)
職務内容の変更と降格の側面を有する配置転換につき、賃金の減額を相当とする客観的合理性がない限り、当該降格は無効となり、降格が無効なら、配置転換命令全体が無効になるとした。

プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インク事件(平成15年 神戸地裁決定)
職務の水準に基準を設け、各バンドの職務内容・昇進の基準を明確化し、バンドごとに基本給の範囲を定めるジョブ・バンド制において、企業の組織再編のための降格的配転の効力を判断するためには、対象者が被る不利益が相当程度である場合には、対象者選択に一定の合理性が必要であるとした。
 
 

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